小塩丙九郎の
歴史・経済データバンク

18. 日本第3の大経済破綻


〔5〕ハイパーインフレは避けられない

(12) 2020年代前半にハイパーインフレになる

 今までに追求してきた日本の金融を巡る様々な状況の見通しを、ここでまとめてみましょう。それは、2つの重大な見通しとして表すことができます。

 その第1は、輸出産業の崩壊が始まった結果、2020年代初頭に経常収支は赤字になるだろうと言うことです(その詳しい説明はここ)。経常収支が赤字になるとは、貿易収支、サービス収支、そして所得収支の3つを合わせた国全体の外国とのお金のやり取りが赤字になると言うことです。1970年代までは、経常収支が赤字になることはよくありましたが、1981年以降は輸出が好調であったことから経常収支は一貫して黒字であり続けてきました(下のグラフを参照ください)。

 それが2020年代初頭には、およそ40年ぶりに再び赤字になると言うことです。そして今度は、一旦赤字になった後、黒字に戻るのはとても難しいことだろう、と小塩丙九郎は考えています。

出典:1984年までは日本統計協会著『日本長期統計総覧 第3巻』(1988年)掲載データを、1985年以降はUNCTAD(国連貿易開発会議)の統計データ(何れもドル表示)を円に換算して、消費者物価指数で割って2015年価格に置き換えて作成。

 その第2は、日本政府が赤字国債を外国資本に買い取ってもらうか、あるいは極端な緊縮財政をいきなり行うのかと言う選択を強いられる状態に陥ると言うことです(そのいきさつは別のところ〈ここ〉で詳しく説明しています)。

 2020年代初頭には、この重大な財政・金融上の2つの問題がほぼ同時に起こることになります。

 一番起こりそうなシナリオは、政府が社会福祉対策などの極端な圧縮を行うことができず、赤字国債を国際金融市場で引き取ってもらおうとするのですが、世界の金融機関や投資家は、日本の経常収支が赤字になり、しかも容易には黒字に回復しそうにないと予測して、日本国債を買い取るときには極端な安値を要求すると言うことです。つまり、極端な円安が進行することになると言うことです。そしてこのことは、輸入物価を急騰させます。

 原材料や燃料、あるいは先端高性能電子機器など国内で調達できない物資や工業製品、あるいはコンピュータソフトを輸入しなくてはならない日本では、急騰した輸入物価は直ちに国内の卸〈おろ〉し、小売物価の急騰に繋がります。こうして日本は高率の物価上昇から、それほど間を置くことなくハイパーインフレに突入することになるのです。そうなるのは、2020年代初頭から半ばにかけてのことです。

 これが日本が経験する第3の大経済破綻であり、以上が、いつどのようにしてそれが起こるか?、という問いに対する小塩丙九郎の回答です。

2017年1月4日初アップ 20〇〇年〇月〇日最新更新
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