小塩丙九郎の
歴史・経済データバンク

18. 日本第3の大経済破綻


〔5〕ハイパーインフレは避けられない

(11) 財政赤字は解消できない(後編)

 また、政府が文教費についての支出額を減らしてきたことから、今や世界の主要国(G20とOECD加盟国)の中で、公的教育投資額のGDPに対する比率は3.2パーセント(2013年)と最低部類であり、その上に民間の教育投資額(つまり家庭の教育費支出額)のGDPに対する比率も低い(1.2パーセント)ので、国全体としての教育費投資額のGDPに対する比率も世界最低の部類にあります。何でも個人負担だと思われているアメリカでも、公的教育費支出額のGDPに対する比率は日本より3割も多い4.2パーセントであり、私的投資額もGDPの2.0パーセントと日本の2倍に近いので、国全体として教育費支出額のGDPに対する比率は、日本が5.4パーセントであるのに対して、アメリカは4割近くも多い6.2パーセントになっています(下のグラフを参照ください)。

出典:OECD統計データを素に作成。

 日本人が教育熱心な国民であるとの常識は既に過去のものになっており、このことが日本の大学の水準を下げ、そして日本の産業技術開発が進まないことの背景になっています。日本の企業経営者たちは、今でも企業内で行うOJT(on-the-job-training)の効用が大きいと主張していますが、先端技術から既に遅れている企業内で提供される技術訓練は世界的視野から見て高度なものではありません。また、企業経営に携わる企業の管理職も、例えばアメリカでは6割が大学院卒業者(その多くがビジネススクールでMBA〈master of business administration;経営修士号〉を獲得した者)であるのに対して、日本の管理職は大学学部卒業の学歴しかもっていません(下のグラフを参照ください)。

出典: 小泉和男・猪木武徳 『ホワイトカラーの人材形成―日米英独の比較』(2002年)掲載データを素に作成。

 現代では、先端産業技術開発を行うためにも、高度な企業経営を行う上でも、高等教育機関で先端的な技能を習得することが必要です。しかし日本は、長年にわたってそうするために必要な教育投資を、国も、自治体も、そして家庭もわずかしか行って来ませんでした。そしてそれでもなお、財務省官僚たちは教育予算を減額したいと思っているのです。

 つまり、1990年代末以来、日本は地方経済の振興と教育施策の充実に完全に背を向けて、ひたすら高齢者に対する福祉予算拡大にまい進してきたのです。日本では近年拡充される大学の学問分野は社会福祉分野ばかりで、科学技術分野にはまったく関心が向けられていません(下のグラフを参照ください)。高齢者の生活維持と向上を最大政策課題として、地方振興や未来世代の育成に冷淡な施策が、今後国の経済成長を産むことに貢献することは、決してないと断言します。

出典:文部科学省『文部科学統計要覧(平成26年版)』掲載データを素に作成。

 このように、政府予算の動向だけを見ても、今後日本経済が成長に向かうことはなく、だから税収が大きく増えることはなく、選挙での投票を期待して高齢者対策費を拡充し続ける政府の体制が続く限りにおいて(野党も基本的スタンスは変わりません)、政府予算額が大幅に減額されることはなく、税収不足率が大きく低下することはなく、赤字国債の発行額を大きく減らすことのできる可能性もない、ということがわかるのです。

2017年1月4日初アップ 20〇〇年〇月〇日最新更新
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