小塩丙九郎の
歴史・経済データバンク

18. 日本第3の大経済破綻


〔5〕ハイパーインフレは避けられない

(9) 財政赤字は解消できない(前編)

 日本の税収総額は、1990年代後半以降ずっと40兆円から60兆円の間を揺れ動いてきています。2013年度以降は税収は50兆円を上回るようになっていますが、それは消費税収入が増えたからです。しかし、経済停滞が続いたままでは、消費税収入を大幅に増やすことはできそうにありません。法人税も、企業の成長力が衰えたままだと、そしてそうでしかあり得ないということは、別のところで繰り返し説明してきたことですが、大幅に伸びることを予測することはできません(これには、過去に赤字を出したことのある企業が欠損金を10年間にもわたって繰り延べできるという優遇措置も効いています)。むしろ、これ以上の円安を容易に誘導できないとすれば、減額する可能性が高いと思えます。だとすれば、今後とも税収の大幅な伸びを期待することはできそうにありません。

出典:財務省資料データを素に作成。

 政府の一般会計歳出予算総額から実効上の意味はない債務償還事務費を差し引いた実効一般会計予算総額(最終補正後、ただし2016年度については第2次補正後)に対する毎年度の税収不足率(=〈実効歳出予算総額−税収総額〉÷実効歳出予算総額)は、年度によって大きく違いますが、およそ3割からおよそ5割の間を上下しています(下のグラフを参照ください)。

出典:財務省資料データを素に作成。

 ところで、小塩丙九郎の計算した税収不足率は、財務省が公表している税収率(1-税収率)とは大きく異なっています。小塩丙九郎の計算した税収率と政府がホームページ上で公表している税収率は下のグラフのように大きく違っています。これは素とするデータに若干の違いがあることもあるでしょうが、一番の違いは、財務省官僚が税収率を計算する時には各年度の税収額を歳出総額で割っているのに対して、小塩丙九郎の計算では分母を歳出総額ではなくて、それから債務償還費を引いた実効歳出総額としていることです。

出典:財務省HP公表値を素に作成

 別のところ(ここ)で説明したように、債務償還費と言うのは財政運営上の都合で計上されている金額で、それが実際の事業に使われることは想定されていません。毎年度利用することが想定され、実際にそのほとんどが年度末に使われている(繰越金を含む)のは歳出総額から債務償還費を引いた金額です。ですから、その実効歳出総額と同額の税収があれば、その年度の会計は収支バランスがとれているのです。

 債務償還費と言う意味のないものを計上し、政府歳出総額についての国民の誤解を招き、その上で税収がこんなにも足りないと言う口実に使うと言うのは、政府財府を扱う官僚として誉められたことではないと思います。実際にもし収支バランスがとれても、それでも財務官僚はまだ税収率は100パーセントに達してはいないと言い張るつもりなのでしょうか? それとも、そもそも収支バランスがとれる日など来るはずはないと信じ切っているのでしょうか?

 そして2017年1月、政府はついに2020年度のプライマリーバランスは8.3兆円の赤字になると公表しました。つまり、2020年度プライマリーバランス・ゼロという目標は放棄したということです。政府の財政赤字脱出の新たな目標は明らかにされていません。

2017年1月4日初アップ 2017年2月28日最新更新(最終フレーズの追加)
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