小塩丙九郎の
歴史・経済データバンク

18. 日本第3の大経済破綻


〔4〕国債の置かれた土壇場の風景

(10) 誰も国債を買わなくなった

 2011年度末から2015年度末までに国債の総残高は920兆円から1,075兆円へと155兆円増えています。しかし、その間、銀行だけで138兆円減額しています。その他減額したセクターすべてを合計した減額の総合計は194兆円です。つまり、155兆円と194兆円を合わせた349兆円という巨額を誰かが保有額を増額して引き受けなければ、国債を発行できなかったということになります。それではいったい誰がその巨額の国債を買い取ったのかと言うことです。もちろん直ぐに想像できるように、日銀です(下のグラフを参照ください)。

出典:日銀『資金循環統計』データを素に作成。

 日銀だけで、349兆円の8割近く(78.8パーセント)の275兆円を買っています。そして残りのうち保険会社が35兆円を、海外資本が33兆円買っています。このうち、海外資本の国債保有額は円では増えているのですが、しかし(実質)ドルでは減っています(下のグラフを参照ください)。海外資本が国債保有額を増やしているように見えるのは、大幅な円安が進んだせいで、海外資本には日本国債を買い増したつもりはありません。唯一日銀以外に国債の保有額を増やしたのは保険会社で、35兆円買い増しています。

出典:日銀『資金循環統計』データを素に作成。

 保険会社は、保険の積立金総額が増えているので国債を買い増しているのですが(下のグラフを参照ください)、しかし保険会社の国債購入意欲は限界に達しています。そのことは、保険会社の資産構成の変化の様子を見て見ればわかります。

出典:日銀『資金循環統計』データを素に作成。

 2000年代までは、保険会社は貸出金の額を減らしながら国債を買ってきました。国内企業が自ら預金額をどんどんと増やすようなありさまで、資金需要を減退させたために、やむなく国債に乗り換えたのです。しかし2010年代に入ってそれも限界に達し、国債のシェアを上げることができなくなりました。それ以降、保険会社の資産のうち国債のシェアは4割を少しだけ上回るだけで増えなくなりました(下のグラフを参照ください)。それでも貸出金のシェアは緩やかにではありますが、減り続けていますので、代わりに若干リスクは上がりますが、海外の証券のシェアを上げつつあります。まことに緩やかにではありますが、保険会社の国債から海外証券への資産移しが始まっているのです。

出典:日銀『資金循環統計』データを素に作成。

 年金も(その国債保有額の推移はこのグラフを参照ください)、保有資産総額が増えなくなっている上に、2010年代前半まで資産のうち国債分が占めるシェアを高めてきていたのが第2次安倍内閣の指導により資産の多くを株の取得にまわしたことから国債のシェアが低下しています(下のグラフを参照ください)。今後の年金基金の運営方針がどう変わるかはわかりませんが、元々国債保有総額が大きくない上に、資産総額が今後大きく増える見込みはないので、年金基金が今後国債保有額を大きく伸ばすことはとても期待できるような状況ではありません。

出典:日銀『資金循環統計』データを素に作成。

 つまり、銀行は国債保有額を急減しつつある、海外資本も日本国債離れを始めている、保険会社も年金基金も今後国債保有額を大きく増やす能力はない、という状況では、今後とも増え続けることになる国債を買う能力があるのは、日銀だけと言うことになるのです。そしてその財源はと言えば、どこにも根拠のない自ら発行する通貨、円、です。敢てもう一人を挙げれば、これからも続くであろう円安(こう思う根拠はここに説明しています)を根拠として見かけ上では膨れる海外資本です。

2017年1月4日初アップ 20〇〇年〇月〇日最新更新
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