小塩丙九郎の
歴史・経済データバンク

21. アメリカの格差問題


[2〕アメリカの格差はどうして起こったのか?

(8) 低所得者の賃金はどうしてカットされたのか?

 それでは、低所得者の賃金はどうして減らされているのでしょうか? 経済学者の説明は、経済のグローバル化によって製造業が空洞化して、あるいは事務所の事務が英語を自由に使いこなすインドなどの新興国に奪われたために、労働者の需要が減り、あるいはそれらの国の低賃金にアメリカ人労働者の賃金が引っ張られたためだということです。つまり、トランプが言うような、経済のグローバル化が問題の元凶だというのです。しかし、その説明は重要な2点において間違っています。

 第1に、経済のグローバル化は、製造業の空洞化によって労働者の賃金上昇を止めたのではなく、製造業では世界で均一賃金化の傾向が強まっているからです。今や工場では自動化が進み、熟練工でなければできない摺〈す〉り合せ工程はほとんどなくなってしまいました。一定以上の訓練を受けた知的な労働者であれば、先進国ならずとも、新興国でも同じような品質の労働を確保できます。日本でも、非正規の向上労働者が増えたのは、以前のような熟練技術の必要性が減ったためです。そのため、アメリカのみならず、世界中の先進国で工場労働者の賃金上昇が止まったのです。

2017年1月4日初アップ 20〇〇年〇月〇日最新更新
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