〔1〕輸出産業の崩壊が始まった
(8) 中国への輸出の構造変化
中国への日本からの輸出も、韓国への輸出に準ずるほど急激で、かつ構造的なものです。
日本から中国への輸出額の変化の様子は、韓国への輸出額のそれに比べて随分と単純です。円表示の中国への輸出額のトレンドは、2007年まで急激に増加し続けていたのが、2008年のリーマンショックに始まる世界経済の後退期に安定傾向に転じ現在(2015年まで)に至ると言うものです(下のグラフを参照ください)。
出典:財務省『貿易統計』データを素に、年平均円/ドル為替レートとアメリカ政府が公表する年平均消費者物価指数で調整して得た金額を素に作成。。
しかし、(実質)ドル表示された中国への輸出額は、リーマンショックに始まる世界経済の影響を僅か1年で克服しつつ2011年まで急増化し続けた後、2012年以降に一転して崖を転げ落ちるような急減額傾向に転じたというものです。
経済学者たちも、中国についてもその経済が伸びれば工業生産に日本から輸入する高性能部品を必要とするので、中国の発展はそのまま日本の輸出額の増加につながると説明してきました。そして実際のところ統計は、2011年まではそうであったことを示しています(下のグラフを参照ください)。
出典:財務省『貿易統計』データを素に、年平均円/ドル為替レートとアメリカ政府が公表する年平均消費者物価指数で調整して得た金額を素に作成。。
しかし韓国への輸出額の変化がそうであったように、2012年以降には、中国の実質GDPが成長し続けている一方で、日本から中国への輸出は急速に減少を始めているのです。経済学者たちは、日本の輸出が近年振るわないのは中国経済が減速し始めているからだと説明していますが、上のグラフはそのような事実はないことをはっきりと示しています。
韓国に対する輸出と同じように、中国に対する輸出の中身の変化を見たのが下のグラフですが、テレビ、船舶、通信機(スマートフォン等)といった完成品の輸出額が伸びている一方で、部品の輸出額は大きく減少しており、自動車部品だけが例外となっている程度です。中国でも、多くの産業分野で、もはや日本からの高性能部品を輸入する必要はなくなっているのです。一つには自国で生産する能力が向上したこと、そしてもう一つには韓国と台湾から日本製品と同等以上の性能をもつ部品をより低価格で輸入できることがあると思われます。
出典:財務省『貿易統計』データを素に、年平均円/ドル為替レートとアメリカ政府が公表する年平均消費者物価指数で調整して得た金額を素に作成。。
こうして、2012年以降、中国の経済発展は日本の輸出産業の発展に、ひいては日本経済の成長に大きく貢献するものではなくなったということです。
2017年1月4日初アップ 20〇〇年〇月〇日最新更新
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