小塩丙九郎の
歴史・経済データバンク

1-日本の若者が今置かれている状況


〔2〕 アメリカの所得格差は経済成長が産んだ

(1) 上位1パーセントの所得シェアの大拡大

 アメリカでは、所得格差が大きく広がっていると言われています。そして特に上位1パーセントの超富裕者の国内総所得についてのシェアがとても大きいと言われています。そしてその報道は、間違ってはいません。日本がまだ高度成長の最後の時期にあった1980年代以降、アメリカの上位1パーセントの高所得者の所得シェア(それらの者の合計所得のアメリカの総所得に対する割合。但し、キャピタルゲインは除く。なお、キャピタルゲインを含んだ総合所得についてのシェアの値も以上の値と大きくは変わらりません)はおよそ8パーセントからおよそ18パーセントへと倍以上に大きくなっています(下のグラフを参照ください)。

1%上位所得者シェア
出典:WID(The World Wealth and Income Database)データを素に作成。WIDが何かの説明はここ

 同じ期間に、日本の値はおよそ7パーセントから9パーセントに伸びただけです。但し、これは日本では所得格差は大きく広がらなかったということを示すデータではないということは、あとで詳しく説明します。

 それでは、このアメリカの所得格差はどうして生じたのかということです。政府の官僚や多くの経済学者は、これはアメリカの強欲なマネーゲームを操るウォールストリートの投機的ディーリングを行う者が、金融工学などといわれるような手法を使って、濡れ手で粟〈あわ〉のような商取引を行った結果だという印象を国民に与えています。その影響の一つがリーマンショックなのであり、日本やその他各国はその被害者なのであると。

 リーマンショックは、加熱したウォール街の金融ディーラーたちの産んだ金融混乱であり、それで世界が大きな被害を被った、そのことはその通りです。しかし、そのことはアメリカの所得格差が生まれた元々の原因とは何の関係もありません。ただ、2000年代以降のアメリカの企業経営方針の変更とは関係があるかもしれません。しかしより重要なのは、前者の方です。そしてそれは、アメリカの先端産業の大発展が格差の拡大を産んだと言うことですです。以下に、そのことの意味を説明します。

2017年1月4日初アップ 20○○年○月○日最新更新
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