小塩丙九郎の
歴史・経済データバンク

1-日本の若者が今置かれている状況


〔2〕 アメリカの所得格差は経済成長が産んだ

(2) 世界の所得格差は縮小し続けている

 所得格差を表す最も代表的な指標としては、ジニ係数というものがあります。ある国の所得の分布を見て、ある一人の人がすべての所得を独占した場合には1に、そしてすべての人が同じ所得を得ている時にはゼロになるように計算される指標です。だから、ジニ係数の値が大きいほど、その国の所得格差は大きいということになります。

 この値は、国民全部を対象としていますので、特定の所得階層の者だけのシェアが伸びたときには、その感度は少し悪いのですが(そう強く主張したのは、『21世紀の資本』〈日本語版:2014年〉を書いたフランス人経済学者のトマ・ピケティです)、このジニ係数で見ても、アメリカの所得格差が近年拡大していること、そしてアメリカの格差は先進国の中で最も大きいことは確認できます。過去四半世紀にわたって、アメリカののみならず、ほとんどすべての先進国で、ジニ係数は上昇している、つまり所得格差は拡大し続けています(下のグラフを参照ください)。

各国のジニ係数
出典:OECDデータベース資料を素に作成。
説明:国によってデータがない年については前後の年のデータで直線補完しました

 ところで、格差問題と言うと国内の格差のことばかりが議論されることがほとんどですが、しかし国内格差が拡大する一方で、世界格差は急速に縮小しているということに、若い皆さんは気づいているでしょうか? 先のジニ係数は、特定の1国内の所得分布の大きさを表しているのですが、同じ方法で世界各国の所得分布の大きさを計算してみる方法があります。そうして得られる指標は“世界ジニ係数”と呼ばれています。

各国のジニ係数
出典:The Conference Board of Canada著“World Income Inequity”掲載グラフ

 この世界ジニ係数の統計値の推移を見れば、1960年代以降、明らかに世界の所得格差は急速に縮小しているのです(上のグラフを参照してください)。1国の所得格差は拡大している、一方世界の所得格差は縮小している、という状態が一体何を表しているのかということを理解しなければなりません。

2017年1月4日初アップ 20○○年○月○日最新更新
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