〔2〕情報産業の誕生と企業構造改革
(6) 日本では行われなかった企業構造改革
先ほど、“restructuring”の大きな2要素を挙げましたが、初めのものについて実施した企業は少なからずあります。例えば、多角化し、大規模化していた業務の効率性を回復するため、分社化(会社の一部を別会社として独立させる)、カンパニー化(会社の一部を内部に置いたままで、独立的に経営させる)、純粋持ち株会社化(会社の中枢部を独立させ、別に独立させた事業部門の持ち株会社とする)などの手法により、経営多角化の非効率さを回復させようというリストラクチャリングを行っています。
或いは、自社株買い戻し(株主の所有株の価値を高め、敵対的買収行為から防御するためなどの目的で行う)といった対策をとった企業もあります。しかし、2要素のうち、業務分野を大幅に変更する、特に業務の一部を大きく縮小し、或いは他に売却するということはほとんど行ってはいません。
1992年に、アメリカでは1,914件のダイベストメント(「剥奪」の意で、企業がその一部の業務をなくすことをいいます)を行ったのに対し、同年日本で実行されたダイベストメントは僅か5件に過ぎず、それ以降もほとんど増えていません(大坪稔著『日本企業のリストラクチャリング』〈2002年〉による)。
先に挙げた分社化、カンパニー化、或いは純粋持ち株会社化という行為は、それまでの業務を行っている事業部門をその企業のグループ内に留めることに変わりはなく、グループ内での組織構造を修正したに過ぎません。つまり、グループ内のある事業部門が、同じグループ内にある事業部門が供給しているモノやサービスを必要とする場合は、そこから優先して調達しています。
日本の企業は構造改革を行ったと主張している。
しかし、それらはアメリカ企業の行ったものとは次元がまったく違う。