小塩丙九郎の
歴史・経済データバンク

1-日本の若者が今置かれている状況


〔4〕 世代間格差はもうすぐなくなる

(1) 世代間格差とは?

 日本の若者にとって、大きな世代間格差があることが問題であるとよく言われます。世代間格差とは、金融資産が高齢者に集中しているとともに、高齢者の福祉や年金支払いに要する費用の多くを、高齢者が多く負担しない一方で、若者は高額負担を強いられており、生涯を通じたバランスでみると、高齢者が大きな黒字であるのに、若者は大幅な赤字になっているということなどです。この考えは“世代会計”と言われ、日本の将来世代にとっての世代会計のバランスの悪さは他の先進国の者に比べて異常なほど大きいことがよく知られています(下のグラフを参照ください)。

世代間格差
説明:現代の新生児に対して将来世代の負担がどの程度大きいかを“世代会計”の概念に基づき計算したもので、日本の数値がおよそ500パーセントであるとは、日本の将来世代の生涯純負担額(生涯支払額から所がい受益額を引いた額)は、現代新生児より500パーセント多い、つまり6倍多い、ということを意味しています。
出典:島澤諭著『世代会計入門』(2011年on-line Pdf.)掲載データを素に作成。
原典:Auerbach, Kotlikoff and Leibfritz Generational accounting around the world 1999 The University of Chicago Press

 さらに、近年、と言っても20年以上も前からのことですが、高齢者対策費が急速に増加し続ける一方で、税収が伸びないので、会計の帳尻を合わせるために国が赤字国債を発行し続けて、その建設国債と合わせた国債の総残高が日本のGDPの2倍をはるかに超える巨額に積み上がっており、その返済は、現代の若者の将来負債として重くのしかかっていると言われています。

 国の財政状況を改善するためには、消費税増税して、財政のバランスを黒字にすることが必要であると論じられるのですが、景気回復が先決だという理由で増税が先送りされると、赤字国債の発行がさらに続いて、若者の将来負担はさらに増えるので大問題だと論ずる消費税増税先送り反対論者の主張もよくあります。

 しかし、これらの議論は何れも、重大きな意味をなすものではありません。なぜなら、これらの議論は、日本の物価が将来にわたって安定しており、高齢者の金融資産は安全であり、赤字国債の額も容易には減らないということを前提としているからです。

 しかしそのような未来についての想定は、おおいに間違っています。あるいは又、そのような議論は、年金については、現役世代が高齢者世代のための出費を負担する現在採られている賦課方式が維持されざるを得ないということも同時に想定していますが、この前提も容易に覆すこともそれほど難しいことではありません。  

2017年1月4日初アップ 20○○年○月○日最新更新
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